お電話でのお問い合わせ TEL 03-3363-7951

理事長通信

トップページ > 理事長通信

人生とは、脳の中で起きた一夜の夢ではないだろうか。2017年4月5日

 人生とは、脳の中で起きた一夜の夢ではないだろうか。会長先生を自室に見舞いながらそんなふうに思いました。
 余生の時間の中で、その人の人生を彩ったものはどんどんはぎ取られ、余分なものはすべて消え失せ、その人の核だけが残る、というのも本当のことのように感じられます。

 会長先生は、日常的には意識がしっかりとしておられ、会話の中心は「人の教育」のことになります。
 「子どもたちを育てる教育というものは、何よりも大事なものだから、責任は重いものだよ。第一、子どもに教える前に、まず親御さんたちを教えていかなければならないんだからね、そこが一番手のかかるところだねぇ」
 「とにかくね、できない子どもをどうやって導くか、ここに教師の腕がかかっているからね。まず、子どもたちの心が理解できるかどうか、そこがわからなければ教えるなんてことはできないわけだからね。指導のテクニックだけ上手なんてことでは務まらない。そこまでできる先生をどうやって育てるか。まあ、毎日毎日の積み重ねだねぇ」
 と自説を展開されたかと思うと、意識が少し薄くなっているときには、
 「今日は工事があるから、職人たちが朝から入れ代わり立ち代わり仕事に来ているけれど、(いえ、そんなことは実際にはありません)いやぁテキパキと仕事を片付けていく職人がいるかと思うと、親方の目の届かないところで、あんまり気持ちの入らない仕事しかできていない職人もいる。十把一絡げにして叱るわけにはいかないからねぇ。だからそんな困ったところを見つけたら、ちょっと近くまで行って声をかけたり、話を聞いてやったり、やる気を出させるようにもっていかなくちゃならないからね。今日は朝からずっと忙しいんだ」
 といったふうです。会長先生の意識は、あの世とこの世を行ったり来たりしている、そんな感じです。そして、あちらの世界とこちらの世界で、人を育てる教育を熱心に続けていらっしゃいます。

 今朝、会長先生の好物を届けに行くと、玄関まで届く歌声が聞こえました。会長先生は若いころ、遠くまで冴え渡る口笛を吹く人でした。メロディアスで空気を通すような音色には陶然とするほどで、夕暮れ時の散歩中に、ふいに始まる父の口笛が私は大好きでした。でもそのころの私は、父の吹く口笛などいつでも聴けるものという感覚しかもちませんでしたので、形で残しておかなかったことがすごく残念です。録音してとっておこうなどと思わなかったのですね。(そういうことって、実は多くないですか?)
 会長先生の歌声がやむと、今度は会話が始まりました。様子をうかがうと、会長先生は現役の先生で、小学校低学年の生徒たちを連れて、野山にピクニックに来ている情景のようです。それはそれは楽しそうな様子です。
 がらんとした映画館で、終演間近のスクリーンをただ眺めているような気分に私はなりました。
 私は確かに、この父のもとに生まれ、教えてもらい、育ててもらい、ようやくでこぼこしながらも大人の一員になれました。
 父はまたその父に、同じように育てられ、今日を迎えています。語りつくせない物語があったはずです。丁寧に出来事をたどったなら、それこそ90年近い時間をかけなければたどれないほどの事が起きてきたはずです。でも通り過ぎた今となっては、一編の詩を読んだ後に残った印象ほどのものかもしれません。

 人生とは、脳の中で起きた一夜の夢ではないだろうか。
 だったらなおさらのこと、実人生では欠点の多い自分を受け入れ、さわやかな一編の詩を紡ぎ、その詩に添って私は生きていこうと思います。

ページトップへ

信頼の指導47年 慶応幼稚舎・早実・慶応横浜初等部・小学校受験・中学受験・中等部受験に勝つ!

| HOME | お問い合わせ |

Copyright 2012, Keiokai Studies In Education All Rights Reserved.