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理事長通信

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自らの病のため、志半ばにしてその職を降りた人がいます。一国の代表者です。2020年9月23日

 自らの病のため、志半ばにしてその職を降りた人がいます。一国の代表者です。離職に際し、その人への労いの言葉もなく、冷たくはないか、と問いかける人がいます。外交面では、国際社会に対し日本の立場を示した実績があると思います。私は一言だけ言います。ご苦労様。
 もしかしたらその他少なくはない、過去に自身が起こした様々な言動に向けられた疑惑の追及に、誠実に正直に答えたら、一発アウトで辞任となっていたかもしれません。そうすると、後の政権の方針や運営が、今よりも良くない方向に進んだやもしれません。政治家の評価は何十年も後になってから定まるものです。結果は今はわかりません。しかしながら、もしかしたら他の誰がその任に就いたよりもマシな政策が実行されていたのかもしれない。その可能性があるならば、あの、数々の不誠実で国民を愚弄したかのような国会答弁も、職に居残るために必要な詭弁であったかもしれません。てんびんにかければ国民にとっては、実は結果オーライ、となるのかもしれません。

 今、通信を書いている時にかけている眼鏡は、以前私が父にプレゼントしたものです。204教室の奥に鎮座する立派な机も父が愛用していたものです。ワシントン条約により今では伐採が不可能な、希少な木材で作られています。合板ですが、板目の波模様がたゆたうブラジリアンローズウッド製です。ハカランダとも言いますね。アコースティックギターのサイドとバックに時おり使われますが、その時はもう目ん玉ぶっ飛び値段ですね。
 その机の上に置いてあった眼鏡をかけてみると、度数が合いません。はて? と考え思い至ったのが、それは以前に私が父にプレゼントしたものだった、ということです。しばらくそのままにしておいたのですが、レンズを入れ替えて自分で使ってみるか、と思い、最近使用しています。

 晩年の父の部屋を訪ねたある時、後ろ姿の父は書斎の机に向かって、手元で懐中時計をいじっておりました。振り向いた父が、「これはね、おやじが昔、『使うといいよ』と言って、くれたものなんだよ」と物語を話してくれました。父は憧憬の眼差しで、小さな時計のふたを、ぱかんと開けて私に差し出しました。
 実はこの時計、もうずいぶん前にロンドンで、父への土産として当時の私が奮発して買い求めたものでした。
 あっ、父さんは記憶違いをしているな、と瞬時に分かったのですが、父がうれしそうな笑顔をうかべている、その表情を壊していいものかどうか、私は躊躇しました。なにしろお父さんっ子であった父が、自らの父を懐かしんで思いにふけっている、その大事な代物のことですからね。
 でも稚拙な考えの私は、私と父の物語に導こうと、正確な記憶に導き直すように言葉を発しました。
 「父さん、それ、僕が昔、父さんにプレゼントしたものだよ」
 すると父はしばらく考え込み、「おお、そうだったか。いやいやすまない。おやじからもらった物にしちゃ年代が合わないな、ちょっと新しすぎやしないか、とは思っていたんだ」と照れ笑いを見せました。

 父がいなくなった後年、部屋の整理をしていたら、相当古ぼけた懐中時計が出てきました。父は確かに、おやじから引き継いだ時計を持っていました。記憶もごっちゃになっていたとは思いますが、手元にある懐中時計はどれであっても、お父さんからいただいた宝物、という思いだけが脳に深く刻まれていたのですね。
 私が娘にとって、そんなに慕われる父になれるか、それはもう日々の努力の積み重ねしかありませんね。政治家の評価がずっと後年に確定するのに比べたら、親父の信頼度の指針は、選挙の開票速報を数分ごとに見てハラハラするような気分です。まあ、議員の代わりはいくらでもいますが、わが子にとって父親は世界で一人だけですからね。その責任の重さは命の次に重いですね。つづく

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