消去法の幸せ。子育てで苦労しない唯一の方法は「子どもを持たないこと」だそうです。そうですか。?2020年7月15日
消去法の幸せ。子育てで苦労しない唯一の方法は「子どもを持たないこと」だそうです。そうですか。?
不倫して世間から叩かれない唯一の方法は「結婚しないこと」だそうです。なるほど、独身という身分の下でなら、それが乱倫に見えるほどのご乱行であっても不倫にはならないと。そうですか。家庭や子どもを持つことより幸せですか。
それじゃあ、なんでしょうね、コロナ禍に巻き込まれない唯一の方法は、息をするのをやめちゃうことでしょうかね。もっと言うなら、不幸にならない唯一の方法は「死んじゃうこと」でしょうかね。生きていれば大変なこともあるし辛いこともあるから。でも苦しみ続けた次の瞬間に、安らぎや喜びや幸せが訪れることがあるのにね。消去法の幸せって、いやなものだなぁ。
TikTokでこんな動画を見ました。タワーマンションの高層階の部屋の様子が映っています。窓からの眺めでは夜景を見晴らす部屋のようです。よくありがちで、富の一象徴に例えられる景色ではありますが、私から見るとまったく没個性の部屋です。でもわかりやすい高価な住空間です。コメントが書かれています。
「金が欲しかった。金さえあれば幸せになれると信じていた。金は手に入った。でも、ちっとも幸せじゃない」なるほど、渇望の果てに「モノ」を手に入れても、それは求めていたものじゃないのですね。
エリック・クラプトンは「ギターの神様」として良く知られたミュージシャンです。ブルースロックのアイコンでもあります。20代の頃、若くハンサムなクラプトンは行く先々で女性に囲まれる暮らしぶりでしたが、当時の彼のコメントは中学生だった私を混乱させました。「たとえ1000人の女性を手に入れられたとしても、それでも俺は不幸だ」
クラプトンは、イギリスの労働者階級の家に生まれました。彼の母は、イギリスに駐屯していたカナダ兵と恋に落ち、エリックを17歳で生みました。しかし実際に彼を育てたのは実の母でも父でもなく、祖母のローズでした。生みの母はエリックを生んだ後に出奔し、父はカナダへ帰りました。彼は祖母と義理の祖父を父母として、愛を受けて育ちました。ローズは後年、インタヴューに答えています。
「エリックが階段に座り弾いているギターを聴いて思ったわ。どうしてエリックの奏でるギターはあんなに悲しげなのかしら。私だって、最大限の愛で包んでエリックを育てたのに」と。
クラプトンは基本的に愛に渇望する気質の人であると思います。時々会う実の母は彼の姉という設定であり、エリックも事実を知りながら祖母を母として育った、ということで、客観的な彼の生育状況を鑑みれば、もしかしたら人格の形成に影響を及ぼしたかもしれません。しかし、それでもなお、彼が本来持っていた気質が彼の人生を支配しているように、私はこの年になって考えるようになってきました。
人間は、生まれ持った資質や気質に負の側面があったなら、それを克服することが、神さまから今生で与えられた宿題なのではないだろうか? 自らのマイナスの気質、たとえば心配性であったり、潔癖すぎるきらいがあったり、実体のない不安に縛られがちであったり、人がさまざまに生活の中で支障をきたしがちな性質など。それらと生涯向き合い、いくらかでも解決し自分を自由に解き放っていくことが人生の大きな目的のひとつなのではないかな、と考えています。
つまりね、生きていくのは容易じゃないってことです。いつか楽になる、いつか幸せになるって、目標達成を先延ばししても、お日様に照らされた自分の影を追い駆けて走る子どもの姿と同じかもしれませんね。
そう考えるなら執るべき態度はひとつ。今がじゅうぶんに満たされていて、幸せでいることを実感することですね。
もっと上を目指そう、という向上心は人を動かす原動力です。ですからもっと上を目指すことや理想を高く掲げることを否定するわけではないです。
でも「足りる」って大事なこと。現状だって捨てたもんじゃない、結構今の状態だって悪くない。と、そこからでないと、今より高みには登れないんじゃないかな。だって、不平や不満でいくら足を踏みしめても、自我の地ならしはできないですもん。
生きていさえすればいいことがある。生きていくのは大変だけれども。命を与えられた喜びの対価として、感謝を口にして天に捧げることでしょうね、不平を口にして自らの耳に入れるのでなく。