あなたはアホウドリをご存知ですか? 2018年4月4日
あなたはアホウドリをご存知ですか? 体の大きな水鳥で、人に対する警戒心がない上に地上ではのんびり暮らしているので、営利目的で近づいてきた人間によって、羽毛布団の材料として乱獲されて絶滅危惧種になってしまった鳥ですね。
私は自分を「アホウドリのような人」と思うことがあります。人の言うことを真に受けて、容易に信じるのですね。最初から人を疑ってかかるということがありません。人がそのように言うのだから、そうなのだろうな、そう思うわけです。
もっとも同様な傾向を持つ人に向かって、あなたはアホウドリのような人だ、とは呼べませんから、「お人よし」と言い換えた方がいいかもしれません。自分では言いませんけれどね。
まあそれで、あまり困ったことも起きないのですが、世の中には確信的な悪意をもって悪行を行う人がおりますから、そういった人の蛮行に後で気づき歯噛みするということは何度もあったように思います。もう記憶の彼方ですからどうでもいいことになりましたけれど。
そういったアホウドリは、人生でどのように生成するのかと問われると、たぶん本人の資質によるところが大きいとは思いますが、私の核を作った幼少時に、人から意地悪をされたことがない、といった奇跡が生育過程にあったためかもしれません。
しかし世の中には「疑り深い人」が少なくないようです。私からすると、どうしてそう疑ってかかるかなぁ? と非常に不思議に思えたのですが、恥ずかしながらこの年齢になって初めて、思い至ったことがありました。
噓をつく人というのは、事実と異なる証言をしても精神に乱れをきたさないような精神構造をもつ人であるようです。(嘘をつく人は良心の呵責を感じない人、などと私が申したなら、私が善人のような立場で妄言を繰り出すことになりますから、表現に気をつけています。)
さらに自我が二重に構築できるような人は、事実として起きたことと、自分が作り上げた虚構との間を自由に行き来できるようですから、ウソ発見器にかけても数値上のブレがなく、嘘が見破れないそうです。
なるほど。疑り深く、容易に人を信じない人は、その人自身がウソつきである(こともある)。自分がいつも事実と異なることを事実のように言うものだから、人が言っていることが真実だとは思えない人だったのですね。あなたはご存知でしたか? そういうメカニズムであったことを。
確信的な嘘つきに嘘を白状させることは至難の業です。確定した証拠を前にしても嘘で強弁する人はいます。これが法廷であれば、判事の心証は極めて悪くなりますが、立証する証拠がなければ、嘘つきが逃げ切れることになります。
どんな人にも、自分を守る権利は法律で保障されています。ですから嘘をつく目的が、自らの名誉を守るためということもあるでしょう。そうであるなら、沈黙する方がまだましなのでは、と思います。嘘の証言をするよりも。
自らが信じるところがあるなら、事実を歪める嘘は恥じ、沈黙をし、沈黙することで背負わされる疑惑や不名誉を背負う方が名誉と考えるなら、自分の流儀に殉じる生き方は、あってもいいと思います。噓をつくぐらいなら。