メリークリスマス!(前回より続き2)2017年12月25日
メリークリスマス!
(前回より続き2)
そんな父母の思い出の物は、遺品の中でも相当の量を占めていました。しかし後に残された長男にとっても、見知らぬ人たちと写る写真やメモやノートはほとんど思い入れをもつこともできず、整理には思い切りが必要となりました。
そこでわが身を考えると、私が大事に思うもののほとんどが、家族にとっては雑多な整理品に過ぎないことに気づき、私自身が部屋の大掃除と断捨離に取りかかった、というわけです。
だいぶ整理をした末に手元に残したコレクションのような物も、「形あるものはすべてムダ」という結論に辿り着きました。哲学の神髄は常にシンプルです。
行き着くところまで行かないと、わからないものです。よかった、途中で飽きたまま放り出さずに最後まで辿り着けて。モノなんかに拘泥する暇や資力があるなら、家族と一緒に旅に出て、網膜に幸せな光景を焼きつけるほうがよっぽど人生を豊かにするでしょう。囲んだ食卓での家族の笑顔を回想できたほうが、永遠に瞼を閉じるときに心豊かに旅立てるというものです。
一月余りでダンボール30箱以上の物を整理し、散らかしていたものはすべて収納でき、家には新たな空気が入り込む余地ができました。その新風は、きっと会員のみなさまのために新たな活力となって、教室にも吹き込んでくると思いますよ。
そんな中で、母が残した私の母子手帳と邂逅しました。父の書き込みも多くあり、私はこの世に生まれてきた時に、身に余るほどの祝福を受けていたことに感謝をしました。
そして見つけたのは母の残した一文です。私は小説一本分の発想をその一文で想起しました。それは、子と母との長きに渡る相克を描いた本のエンディングで登場します。
「坊や、母の願いの通りに育ってちょうだいね」という一行を何度も噛みしめ、母と同じ時間を過ごし、同じ景色を一緒に眺めながら、同じように歩んで来たわけではなかったことを悟った壮年の男が、母の一行の横に自らの言葉を書き加えて母子手帳をしまう。そこに加えた一言は、「母さん、ありのままの僕を受けいれてほしかったよ。愛してるよ、母さん」。
出発点から離れていた母と子は、母を受け入れることができた子により、ようやく和解の日を迎える、というストーリーです。
カズオ イシグロなら小品にまとめてくれそうな気がしますが。「晩秋の梵鐘」なんてタイトルはどうでしょう。By カズオ ハラグロ。
またギャグにしてしまいましたねぇ。私の中には、小説家でもある私がまだ眠っているままですからね。起きたら書くぞー、ペンネームで。
今年一年、会員さん、みなさまにとってどんな年でしたか? 来年はより充実した年となることを心より祈念いたします。みなさま良いお年をお迎えください。